Profile

藤田絢三
Junzo Fujita

 

ジャズサックス奏者

東京生まれ。
明治大学在学中に、同大学のジャズ研究会で、バンド・マスターを務め、ジャズサックスを大友義雄氏に師事する。早稲田大学モダン・ジャズ研究会にも所属。
卒業後ボストンのバークリー音楽大学に留学し、パフォーマンス・サックス科にて、ジョセフ・ヴィオラ氏、ビル・ピアース氏らに学ぶ。3年間勉強後帰国。

帰国後は、自らのユニット、バンドでのライブ活動を開始するとともに、サックス教室「ブレスフィールド」を主宰、代表講師を務めるほか、

サックス教則本の執筆も多数手がけている。

Column

音楽って

僕の親友に素敵なドラマー(ドラムを叩く人のことです)がいます。
彼は、とっても素晴らしい先生でもあります。
「パーカッションって、唯一間違えたときに笑える楽器みたい」
そう言っていました。
それって最高ですよね。
音楽は、おそらく言語よりも前にあったはずです。
そして、そのスタートは物を叩く!!ってことなんです。
そこに喜怒哀楽のすべてが込められていたはずです。
音楽は上手とか、下手とか、盛り上がったとか、褒められたとか、
そんな副詞だけに収まるものでは無いはずです。

~サックスを演奏することは、呼吸するということ~
その昔、サックスの先生の神様のような存在である
ジョー・アラードさんは言いました。
ブレスフィールドの名前の起源もここにあります。
人の生き様の中に、必ず音楽は存在します。
笑い、楽しみ、表現する──
そういうベーシックなことを最も大切にしたいと思っています。

Breath Field代表 & Saxophone奏者 藤田絢三

SAXを買いに行ったあの日

昼からの雨が、大久保の改札を出るとかなり激しくなっていた。
大学のジャズ研の先輩に連れられるまま、
老舗と云われるその店に向う自分は
なんだか妙に心細く、その日の雨雲のように広がる不安感が、
憧れの楽器を手にする期待を大きく上回っていたように思う。
僕達はうわずった会話を重ね、
足もとを濡らしながら随分と歩いた。

その店は閉っていた。
ちょっとホッとして、それからそういう弱気な自分に腹が立った。
店はまるで普通の日本家屋で、田舎の親戚の家を思い出させた。
しばらく先輩と立ち話をしていると、向いのお宅のおばさんが買い物から戻って来て
「だれかいるでしょ、たずねてごらん」とやさしく声をかけてくれた。
その言葉に背中を押され、おずおずと玄関に足を踏み入れた僕の目の前には、
まさにストロングスタイルな町工場という様相の、緊張感のある独特な世界が広がり、
入り口には、大きめの椅子にあぐらをかいてサックスの修理に没頭する
強面の御主人がいた。
そのたたずまいは、凄みのあるオーラを強く発していた。
「あのーアルトのマーク6thはありますか…」僕は一歩踏み出した。
20年以上も昔のことだけれど
あの時の気持ちを大切にしたい。

SAX 奏者  藤田絢三